チューリンゲン・フィルハーモニーが最初にとりあげたグリンカの{{ルスランとリュドミラ}}
序曲の良い印象は次の曲にも及び、
チャイコフスキーの有名なヴァイオリン協奏曲ニ長調の冒頭でオーケストラの弦がビロードのような柔らかい響きを聞かせた。
まるでソリスト植村理葉のために赤い絨毯を敷いたようなものだった。
現在ベルリンに住む日本のすぐれたヴァイオリニスト植村は優しい音でひきはじめ、それは彼女の演奏の特徴のひとつをしめしていた。
それとともに彼女は、G線の豊かで力強い味わいも表現できる。
その重音奏法とスケールは、非のうちどころがない。
第1楽章のカデンツァの一番高い音は、まるできれいな笛の音を聞いているようで、
ごくわずか少しつやのないところがあったのを別として、清潔感あふれる美音を楽しめた。
主要主題と副主題の歌い方にうっとりさせられ、上品なテンポのとりかたに納得させられた。
(彼女のテンポのゆれは、繊細さを感じさせる。) ゆっくりした第2楽章ト短調では、植村は高度な抑制、
いきいりたつクレッシェンド、悲痛なむせび泣き、と様々な表情で"スラブ的なメランコリ−"の表現を追求した。
------ それに感情移入しながらついていった指揮者とオーケストラ。
チャイコフスキーのフィナーレは、民族のお祭りにかりたてるような感じをさせることがよくある。
突然中断したようであっても、重苦しさを意図せず、すぐにどんどんハメをはずしていくモティーフの繰り返しになっていく。
フィナーレでも植村は、先にたっていく演奏者としてはっきり際立った。
静かな場面でも、常に新しくスタートを切るところでも。
またそれから、オーケストラの楽器によるソロのバランスのとれた掛け合いも注目に値した。
喝采へのお礼に彼女はアンコールをひいた。
ここでも植村はヴィルトゥオーゾだった。
パガニーニの、いろいろな編曲があってよく知られたイ短調のカプリスが、
作曲者自身のヴァリエーションで模範的に演奏されるのを聞くことができた。
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